歯周病と食事の関係|特定の栄養素より優先したいこと
「歯周病によい食べ物はありますか?」「ビタミンやサプリメントを摂れば、歯周病は改善しますか?」
歯周病の治療やメンテナンスを受けている方から、このような質問をいただくことがあります。
ビタミンC、ビタミンD、EPA・DHAなどのω3脂肪酸、カルシウム、抗酸化物質など、歯周病との関連が研究されている栄養素はいくつもあります。また近年では、個別の栄養素だけでなく、地中海食のような食事パターンと歯ぐきの炎症との関係も研究されています。
食事や栄養状態が、免疫反応や炎症、創傷治癒、骨代謝などを介して、歯周組織に影響する可能性はあります。一部の研究では、糖分を控えることや、特定の栄養素を歯周治療と併用することで、歯ぐきからの出血や歯周ポケットに小さな改善が認められたという報告もあります。
しかし、ここで注意したいのは、食事に関係があることと、特定の食べ物やサプリメントで歯周病を予防・治療できることは同じではないという点です。
現在の研究からは、食事は歯周病対策を補助する可能性があるものの、特定の栄養素だけで歯周病を予防したり、失われた歯周組織を回復させたりできるとはいえません。
歯周病対策としてまず優先すべきなのは、毎日のプラークコントロール、必要な歯周治療、喫煙や糖尿病などのリスク管理、治療後の定期的なメンテナンスです。
今回は、歯周病と食事の関係について、現在わかっていることと、まだわかっていないことを分けながら、世田谷駅・上町駅周辺から通える歯医者 世田谷まきの歯科が解説します。
1.歯周病と食事の関係は、むし歯と糖ほど明確ではありません
歯周病と食事の関係を理解するには、まず、むし歯と歯周病の違いを整理する必要があります。
むし歯と糖の関係
むし歯では、糖を摂取すると口腔内細菌によって酸がつくられ、歯の表面からカルシウムやリンなどのミネラルが失われます。
そのため、糖の摂取量だけでなく、糖を含む飲食物を摂取する頻度も、むし歯の発症と進行に関係します。
むし歯については、
・糖を摂取する
・細菌が糖を代謝する
・酸がつくられる
・歯が脱灰する
という流れを、比較的直接的に説明できます。
歯周病はプラークに対する炎症反応から始まる
一方、歯周病は、歯と歯ぐきの境目に蓄積する細菌性バイオフィルム、つまりプラークに対して炎症が起こる病気です。
歯肉炎では、歯ぐきに接する歯面にプラークが蓄積することで、歯ぐきの腫れや出血が起こります。
さらに、炎症が歯を支える組織まで広がると、歯周ポケットが深くなり、歯槽骨などの歯周組織が失われる歯周炎へ進行します。
むし歯と歯周病は、いずれも細菌性バイオフィルムが重要な病気ですが、病気が進行する仕組みは同じではありません。ヨーロッパ歯周病学会と欧州う蝕学会の合同ワークショップでも、両疾患はバイオフィルムを共通の要素としながら、それぞれ異なる病態をたどることが整理されています。
食事は歯周病の炎症を修飾する可能性がある
歯周病では、細菌性バイオフィルムだけでなく、患者さん自身の免疫反応や炎症反応も、組織破壊の程度に関係します。
そのため、
・栄養不足
・糖尿病
・肥満
・喫煙
・全身の慢性炎症
・遺伝的な感受性
などが、同じ程度のプラークが存在していても、歯周病の進み方に違いを生じさせる可能性があります。
食事は、こうした全身状態や炎症反応を通じて、歯周病に影響する可能性があります。
ただし、食事によって炎症反応が変わる可能性があることと、プラークを残したまま食事だけで歯周病を管理できることは別の話です。
食事を改善しても、歯周ポケット内に細菌性バイオフィルムや歯石が残っていれば、歯周病の主な原因は十分にコントロールされません。
2.歯肉炎が改善することと、歯周炎が治ることは同じではありません
歯周病と食事に関する研究を読む際には、研究対象が「歯肉炎」なのか「歯周炎」なのかを確認する必要があります。
歯肉炎は、主に歯ぐきに限局した炎症です。評価には、歯ぐきからの出血や赤みなどが用いられます。
一方、歯周炎では、歯を支える骨や歯根膜などの組織が失われます。そのため、治療効果を評価する際には、
・歯周ポケットの深さ
・歯ぐきからの出血
・歯を支える組織の減少
・歯の揺れ
・歯の喪失
などを長期間確認する必要があります。
食事介入によって歯ぐきからの出血が少し減ったとしても、それだけで、深い歯周ポケットが改善した、歯槽骨の喪失が止まった、歯を失うリスクが下がったとは断定できません。
ヨーロッパ歯周病学会の2026年の教育記事でも、食事介入研究の多くは歯周炎そのものより歯肉炎を対象としており、歯周炎の長期的な治療成績については、さらに研究が必要であるとされています。
したがって、歯周病と食事の研究では、統計学的に変化が認められたかだけでなく、患者さんにとって意味のある大きさの変化か、長期間維持されるかまで考える必要があります。
3.歯周病との関連が研究されている主な栄養素
歯周病との関連が研究されている栄養素には、主に次のものがあります。
・ビタミンC
・ビタミンD
・EPA・DHAなどのω3脂肪酸
・カルシウムやマグネシウム
・カロテノイドなどの抗酸化物質
・亜鉛やセレンなどの微量元素
それぞれについて、現在の研究を簡潔に整理します。
①ビタミンC
ビタミンCは、コラーゲンの合成や結合組織の維持、抗酸化作用などに関わる栄養素です。
著しいビタミンC不足では、歯ぐきからの出血や創傷治癒の遅れが起こることがあります。また、観察研究では、ビタミンCの摂取量や血中濃度が低い人ほど、歯周状態が悪い傾向が報告されています。
ただし、ビタミンCが不足していない人に、さらにサプリメントを追加すれば歯周炎が改善するとは限りません。
系統的レビューでは、ビタミンCの摂取によって歯肉炎の出血が改善する可能性はある一方、歯周炎における歯周ポケットの減少や、歯を支える組織の改善については、明確な効果が確認されていません。
したがって、ビタミンCについては、不足を防ぐことは重要だが、多く摂取すれば歯周病が治るわけではないという理解が適切です。
②ビタミンD
ビタミンDは、カルシウム代謝や骨代謝に関係するだけでなく、免疫反応や炎症反応にも関わると考えられています。
複数の研究では、歯周炎のある人は、歯周組織が健康な人よりも血中ビタミンD濃度が低い傾向が報告されています。
一方で、血中濃度が低いことが歯周炎の原因なのか、食生活、日光曝露、肥満、年齢、全身疾患などの影響なのかを区別することは簡単ではありません。
ビタミンDを歯周治療に追加した研究では、一部の指標に小さな改善が認められた報告もありますが、歯周ポケット、出血、歯肉炎指数などへの効果は一貫していません。
明らかなビタミンD不足がある場合には、骨や全身の健康のために医科で適切に対応する必要があります。しかし、歯周病の治療を目的として、すべての方が自己判断でビタミンDサプリメントを摂取すべきとはいえません。
③EPA・DHAなどのω3脂肪酸
EPA・DHAなどのω3脂肪酸には、炎症の収束に関わる作用があるため、歯周治療への応用が研究されています。
2026年に公表された系統的レビューとメタ解析では、通常の非外科的歯周治療にω3脂肪酸を追加した群で、歯周ポケットや歯を支える組織の指標に、短期的で比較的小さな上乗せ効果が報告されました。
これは注目すべき結果ですが、
・使用した量や期間が研究ごとに異なる
・アスピリンを併用した研究が含まれる
・対象者の全身状態が異なる
・長期的な歯の保存効果は不明
歯周治療を行わず、ω3脂肪酸だけを摂取した研究ではないという点に注意が必要です。つまり、ω3脂肪酸には歯周治療を補助する可能性がありますが、歯石除去やプラークコントロールの代わりになるものではありません。
④カルシウム・マグネシウム
カルシウムやマグネシウムは、骨や筋肉、神経などの健康を維持するために必要な栄養素です。
摂取量や血中濃度が低い人では、歯周病や歯の喪失が多いという観察研究があります。
しかし、カルシウムを多く摂取すれば、歯周病によって失われた歯槽骨が元に戻るわけではありません。
歯周病による骨の喪失は、単純なカルシウム不足ではなく、細菌性バイオフィルムに対する慢性的な炎症によって生じます。
全身の骨の健康のために必要量を確保することは重要ですが、カルシウムやマグネシウムだけを歯周病治療として考えることはできません。
⑤抗酸化物質や微量元素
カロテノイド、ビタミンE、亜鉛、セレンなどについても、歯周病との関連が研究されています。
歯周炎のある人では、これらの栄養素の摂取量や血中濃度が低いという報告や、機械的な歯周治療と併用すると炎症指標が改善したという報告があります。
一方で、研究数は限られており、対象者、投与量、治療方法、評価期間も統一されていません。
ヨーロッパ歯周病学会の教育記事でも、ビタミン、ミネラル、微量元素には一定の可能性があるとしながら、因果関係や具体的な推奨量を明らかにするには、さらに質の高い前向き研究や介入研究が必要とされています。
4.なぜ、栄養と歯周病の研究結果は簡単に結論を出せないのか
「栄養素が少ない人ほど歯周病が多い」という結果があっても、それだけで、その栄養素の不足が歯周病の原因とは断定できません。
主に次の理由があります。
①生活習慣が同時に影響する
バランスのよい食事をしている人は、
・歯磨き習慣が良好
・喫煙率が低い
・運動習慣がある
・定期的に医療機関を受診する
・糖尿病や体重を管理している
といった、ほかの健康行動も良好である可能性があります。食事だけの影響を、これらの生活習慣から完全に切り離すことは困難です。
②歯周病によって食事内容が変わる場合がある
歯が揺れている、噛むと痛い、歯が少ないなどの問題があると、硬い野菜、肉、果物などを避け、やわらかい食べ物に偏ることがあります。
つまり、食事が悪いから歯周病になっただけではなく、歯周病によって噛みにくくなり、食事内容が変化したという逆方向の関係も考えられます。
③不足を補うことと、必要以上に追加することは異なる
明らかな栄養不足がある人に不足分を補うことと、すでに必要量を摂取している人がサプリメントを追加することは同じではありません。
不足している人には意味があっても、充足している人に追加しても効果が得られない場合があります。
④研究期間が短い
歯ぐきからの出血は、比較的短期間でも変化を確認できます。
一方、歯槽骨の喪失、歯周炎の再発、歯の喪失などを評価するには、数年から十年以上の観察が必要です。
食事研究の多くは期間が短く、歯周病の長期的な経過まで評価できていません。
⑤食事内容を正確に測ることが難しい
食事調査は、本人の記憶や申告に基づくことが多く、摂取量を完全に正確に記録することは困難です。
また、「地中海食」「抗炎症食」「健康的な食事」といっても、研究ごとに定義や内容が異なる場合があります。
こうした理由から、歯周病と食事の研究は重要である一方、結果を単純化して「この栄養素が効く」と説明することには注意が必要です。
5.特定の栄養素より、食事全体の質が注目されています
近年では、一つの栄養素だけではなく、食事全体の組み合わせと歯周病との関係が研究されています。
野菜、果物、豆類、魚、全粒穀物などを含む食事パターンをとっている人では、加工食品や糖分、飽和脂肪の多い食事に偏っている人よりも、歯周状態が良好である傾向が報告されています。
ただし、食事パターンと歯周炎に関する研究の多くは観察研究であり、食事を変えたことによって歯周炎の発症や歯の喪失が減るという因果関係は、まだ十分に確立していません。
地中海食を用いた介入研究では、プラーク量に明確な変化がなくても、歯ぐきからの出血などが改善したという報告があります。しかし、これは主に歯肉炎を対象とした研究であり、失われた歯槽骨が回復したことを示すものではありません。
現在の研究からは、特定の食品を大量に食べるよりも、野菜、果物、豆類、魚、肉、卵、乳製品、穀類などを、その人の健康状態に合わせて偏りなく摂取する
という考え方の方が現実的です。糖尿病、腎臓病、消化器疾患、食物アレルギーなどがある方では、一般的に健康とされる食事が、そのまま適しているとは限りません。医師や管理栄養士による指示がある場合は、そちらを優先してください。
6.糖分を控えることは歯周病にも意味がある?
糖分と歯周病の関係は、むし歯ほど単純ではありません。
一方で、自由糖の摂取を制限した研究をまとめた系統的レビューでは、糖を制限した群で歯ぐきの炎症が改善したと報告されています。
ただし、この研究には注意点があります。
・対象者数が209人と多くない
・古い時代の研究が多い
・歯肉炎の評価が中心
・歯周炎の進行や歯の喪失を評価していない
・研究方法に一定のばらつきがある
そのため、甘い物をやめれば歯周病が治るとはいえません。
それでも、糖分の多い食品や飲料を頻繁に摂取する習慣を見直すことは、むし歯予防、体重管理、血糖管理という点で重要です。
特に糖尿病は、歯周病の発症・進行や治療結果に関係する明確なリスク因子です。糖尿病がある方にとっては、食事療法と血糖管理を続けることが、間接的に歯周病の管理にもつながります。EFPの診療ガイドラインでも、糖尿病の代謝管理や禁煙などのリスク因子への対応が、歯周治療の基盤に位置づけられています。
7.サプリメントを追加する前に確認したいこと
歯周病によいと紹介されているサプリメントには、ビタミンC、ビタミンD、ω3脂肪酸、カルシウム、抗酸化物質などがあります。
しかし、サプリメントは、食品より多い量の栄養素を容易に摂取できるため、「栄養素だから多く摂っても問題ない」とは限りません。
摂取を考える際には、少なくとも次の点を確認する必要があります。
・本当にその栄養素が不足しているか
・食事から摂取できない理由があるか
・服用中の薬との関係はないか
・腎臓病や肝臓病などの全身疾患はないか
・妊娠中や授乳中ではないか
・ほかのサプリメントと重複していないか
明らかな栄養不足が疑われる場合には、自己判断で大量に摂取するのではなく、必要に応じて医科で検査を受け、医師や管理栄養士の判断のもとで補う方が合理的です。
また、一部のサプリメントに歯周治療への上乗せ効果が示されても、それは通常、歯周ポケット内の清掃や歯石除去を行ったうえで追加された結果です。
サプリメントだけを摂取し、必要な歯周治療を受けなければ、原因となる細菌性バイオフィルムを十分にコントロールすることはできません。
8.食事を整える意味がないわけではありません
ここまでの説明は、「食事は歯周病に関係しない」という意味ではありません。
栄養不足が続けば、歯周組織に限らず、
・免疫機能
・創傷治癒
・筋肉量
・骨代謝
・皮膚や粘膜
・全身の体力
などに影響する可能性があります。
食生活は、肥満、糖尿病、脂質異常症などの全身状態を通じて、歯周病の炎症や治療結果に関係する可能性もあります。肥満と歯周病には関連が認められますが、その因果関係や治療への影響については、なお研究が続いています。
そのため、全身の健康を維持できる偏りの少ない食生活は重要です。
当院では、歯周病の患者さんに対して、特定の食品を一律に禁止したり、特定のサプリメントを全員に勧めたりするのではなく、
・食事量が極端に少なくないか
・体重が急激に減っていないか
・糖尿病の管理が不安定ではないか
・歯が痛くて食べられないものが増えていないか
・義歯や噛み合わせの問題が食事を妨げていないか
などを含めて確認することが重要だと考えています。
食事の内容だけを見るのではなく、なぜその食生活になっているのかまで考えることが必要です。
9.当院が歯周病対策で優先する四つのこと
ヨーロッパ歯周病学会の歯周炎治療ガイドラインでは、歯周治療を段階的に進める考え方が示されています。
治療の基盤となるのは、患者さん自身によるプラークコントロール、専門的な歯垢・歯石の除去、喫煙や糖尿病などのリスク因子への対応です。その後、歯周ポケット内の処置、必要に応じた追加治療、治療後の継続管理へ進みます。
当院が、歯周病対策としてまず優先するのは次の四つです。
①歯ブラシと歯間清掃器具による毎日のプラークコントロール
歯周病の原因となるプラークは、毎日形成されます。
歯医者で歯石を除去しても、その後の歯磨きや歯間清掃が不十分であれば、歯ぐきの炎症は再び起こります。
歯ブラシだけでは、歯と歯の間を十分に清掃できないことがあります。そのため、患者さんの歯並びや歯周病の状態に合わせて、歯間ブラシやデンタルフロスを使い分けます。
②歯周ポケット内のプラークや歯石に対する適切な治療
深い歯周ポケットの内部は、患者さん自身の歯ブラシでは清掃できません。
歯周ポケット内に歯石や細菌性バイオフィルムが残っている場合には、専用の器具を用いて、歯根面の清掃を行う必要があります。
状態によっては、非外科的な処置だけでなく、歯周外科治療や抜歯などを検討することもあります。
食事やサプリメントは、こうした原因除去の代わりにはなりません。
③喫煙や血糖など、明確なリスク因子への対応
喫煙と糖尿病は、歯周病の進行や治療結果に関係する重要なリスク因子です。
食生活を整えていても、喫煙が続いている、糖尿病の状態が不安定であるといった場合には、歯周病のリスクを十分に下げられないことがあります。
必要に応じて医科と連携し、口腔内だけでなく全身状態も含めて管理します。
④治療後の状態を維持する定期的なメンテナンス
歯周病は、治療によって炎症が改善した後も、再発する可能性があります。
定期的なメンテナンスでは、
・歯周ポケット
・歯ぐきからの出血
・歯垢や歯石の付着
・歯の揺れ
・噛み合わせ
・セルフケア
・全身状態や生活習慣の変化
などを確認します。必要な間隔は患者さんによって異なります。状態が安定していれば間隔を延ばせることがありますが、深い歯周ポケットや出血が残っている場合には、より短い間隔で確認することがあります。
10.食事の話を否定するのではなく、優先順位を整理する
歯周病の患者さんが食事やサプリメントに関心を持つことは、決して悪いことではありません。
自分の健康を改善したい、できるだけ歯を残したいという気持ちの表れでもあります。
そのため当院では、
「食事は関係ないので、気にしなくてよい」
と切り捨てるのではなく、
「食事は全身と歯ぐきの健康を支える可能性があります。ただし、歯周病の原因に対する治療には優先順位があります」
と説明することを大切にしています。
食事を整えることと、歯周治療を受けることは、どちらか一方を選ぶものではありません。
ただし、歯周ポケット内にプラークや歯石が残っている段階で、サプリメント選びに多くの時間や費用をかけるよりも、まず原因となる細菌性バイオフィルムを減らす方が、治療としての優先順位は高くなります。
そのうえで、糖尿病、低栄養、肥満、食事量の低下などがあれば、患者さんの状態に合わせて食生活も検討します。
11.歯周病と食事に関するよくある質問
歯周病によい食べ物はありますか?
特定の食品だけで歯周病を予防・治療することはできません。
野菜、果物、魚、肉、卵、大豆製品、穀類などを組み合わせ、必要な栄養素が不足しない食生活を続けることが基本です。
一方、どれほど健康的な食事をしていても、歯の周囲にプラークが残っていれば歯肉炎は起こります。食事と同時に、歯磨きや歯間清掃を続ける必要があります。
ビタミンCを摂れば、歯ぐきからの出血は治りますか?
明らかなビタミンC不足がある場合には、不足を補うことで出血が改善する可能性があります。
しかし、歯ぐきからの出血の多くは、プラークによる炎症と関係します。ビタミンCだけを摂取しても、プラークが残っていれば炎症の原因は解消されません。
出血が続く場合は、歯周ポケットやプラークの付着状態を確認する必要があります。
ビタミンDやカルシウムを摂れば、歯槽骨は戻りますか?
ビタミンDやカルシウムは骨の健康に必要ですが、サプリメントを摂取するだけで、歯周病によって失われた歯槽骨が元に戻るわけではありません。
歯槽骨の喪失を抑えるには、歯周病による炎症をコントロールすることが優先されます。
EPA・DHAは歯周病に効果がありますか?
歯周治療にEPA・DHAなどのω3脂肪酸を追加することで、小さな上乗せ効果が得られる可能性はあります。
ただし、現時点では、すべての歯周病患者さんに一律に推奨できるほど、使用量、期間、対象者、長期的効果が確立しているわけではありません。
甘い物を控えれば歯周病は治りますか?
糖分を控えることで、歯ぐきの炎症が減る可能性を示す研究はあります。
ただし、甘い物を控えるだけで歯周ポケット内の歯石やプラークが除去されるわけではありません。
糖分の摂りすぎを見直すことは、むし歯予防、体重管理、血糖管理には重要ですが、歯周病治療の代わりにはなりません。
サプリメントを飲んでいれば、歯周病のメンテナンスは不要ですか?
不要にはなりません。
サプリメントでは、歯石の除去、歯周ポケットの検査、噛み合わせの確認、歯の揺れの変化などを行うことはできません。
歯周病治療後には、セルフケアと定期的なメンテナンスを継続する必要があります。
12.歯科治療は、生涯の「食べる」を支えるために
私たちの身体は、食事から得られるエネルギー、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルなどによって維持されています。
栄養が不足した状態が続けば、歯周組織に限らず、筋肉、骨、免疫機能、創傷治癒などにも影響し、さまざまな健康障害につながる可能性があります。
食生活を整えることは、全身の健康を維持するうえで欠かせません。
ただし、栄養を摂取するためには、食べ物を噛み、飲み込み、安全に消化できることも必要です。
・歯周病が進行すると、
・歯が揺れる
・噛むと痛い
・歯が移動する
・歯を失う
・硬い物を避けるようになる
・食べられる物が限られる
といった問題が生じることがあります。
その結果、食事の選択肢が狭くなり、必要な栄養を摂取しにくくなる場合があります。
歯周病やむし歯の治療の目的は、単に炎症を抑えたり、悪くなった歯を修復したりすることだけではありません。
歯や歯周組織を守ることは、食べ物を噛み、味わい、身体に必要な栄養を摂取する機能を守ることでもあります。
食事は、健康を維持する手段であると同時に、日々の生活を豊かにする大切な楽しみの一つです。
生涯にわたって必要な栄養を無理なく摂取し、食べたい物を自分の歯で噛み、食事を楽しめる状態をできる限り維持することも、歯科治療の重要な目的だと当院は考えています。
まとめ
歯周病と食事の関係については、研究が増えています。
ビタミンC、ビタミンD、EPA・DHAなどのω3脂肪酸、カルシウム、抗酸化物質などについて、歯周病との関連や、歯周治療への上乗せ効果が報告されています。
また、野菜や果物、魚、豆類などを含む食事パターンや、糖分を控えた食生活が、歯ぐきの炎症を軽減する可能性も示されています。
一方で、研究の多くには、対象者数、研究期間、食事内容、投与量などの違いがあります。歯肉炎の出血が改善したという結果を、そのまま歯周炎の進行抑制や歯の保存効果として解釈することもできません。
現時点では、特定の食品、栄養素、サプリメントだけで歯周病を予防・治療できるという十分な根拠はありません。
歯周病対策としてまず優先したいのは、次の四つです。
・歯ブラシと歯間清掃器具による毎日のプラークコントロール
・歯周ポケット内のプラークや歯石に対する適切な歯周治療
・喫煙や糖尿病などの明確なリスク因子への対応
・治療後の状態を維持するための定期的なメンテナンス
食事や栄養への関心を否定する必要はありません。
歯周病と食事の関係、サプリメントの使用、治療後の管理について不安がある方は、世田谷駅・上町駅周辺から通える歯医者「世田谷まきの歯科」へご相談ください。
【監修】
牧野 友亮(世田谷まきの歯科 院長 / 歯科医師)
【経歴】
・2009年 昭和大学臨床研修
・2010年 志田歯科医院
・2012年 スウェーデンデンタルセンター
・2017年 世田谷まきの歯科 開院
【所属学会】
・日本歯周病学会
・日本顕微鏡歯科学会
・日本口腔インプラント学会