上顎洞炎、含歯性嚢胞

自転車に乗って段差とかあると左上の奥歯に響く、と来院されました。挺出感とか、浮遊感と表現される症状でしょうか、痛いまではいかないようです。

所見ではむし歯、歯周病はなさそうなので、CT撮影を行いました。

CTを撮ったところ、左側上顎洞(副鼻腔の一つ、鼻水が作られる。向かって右側。)に不透過像(黒くない、グレーになっている)が確認できます。また、上顎骨の幅は少なく、歯の根っこが上顎洞に入り込んでいるようにも見えます。副鼻腔に炎症があるとき、歯へ炎症が波及することがあります。この時期、特に花粉症のシーズンというわけでもないのですが、同じような症状を訴える方がたまたま三人ほどいらっしゃいました。歯に炎症が波及して病気になることもあり得ますが、現段階で歯科的アプローチは何もありませんので、耳鼻科を紹介し、加療いただくこととなりました。

その後患者さんのお店に遊びに行ったとき、歯の違和感はほとんどないけど、耳鼻科の治療は難儀しているとのことでした。副鼻腔炎で悩んでいる方は結構まわりにいまして、なかなか治りづらいようです。良い耳鼻科の先生がいましたらご紹介ください。

こちらは、下あごの親知らずが腫れていたいと来院された患者さんです。親知らずは前医より様子を見ましょうということでしたが、上顎の智歯(親知らず)は位置が変だったこと、下顎智歯は位置が深く下歯槽神経損傷のリスクが高く見えたのでCT撮影を行いました。左側上顎智歯は、副鼻腔に完全に入り込み、歯の頭は嚢胞様不透過像に包まれていたため、含歯性嚢胞の疑いとして、東京医療センターの歯科口腔外科を紹介させていただきました。

外科の先生より、手術の必要があり、それに先立ち左上大臼歯の神経の治療を行うよう指示があったため、抜髄処置(歯の神経を抜く治療)を行いました。

その後全身麻酔化で含歯性嚢胞の摘出と左右側下顎大臼歯の抜歯を行い、一週間入院されたそうです…考えただけで大変そうです。本当、よく頑張りましたよね。

病理検査の結果、悪性のものではないそうなので、これにて治療終了との連絡をいただきました。あとは神経を抜いた歯の修復処置(被せ物か詰め物)を行ってうちも治療終了ですね。この手術に比べればなんてことないはず。

歯科用CTは被ばく量も小さく、鮮明な画像も撮れますので、歯科疾患以外の頭頚部画像診断にも有用かと思います。ただ、耳、鼻、喉、脳、眼などは専門外の為、できるなら包括して診断のできる、放射線専門医、診断専門の先生に診ていただくことをお勧めしております。人生でそう何度も撮影するものではないですから、撮影の際、興味があればご相談ください。

※放射線専門医の診断料は保険外診療で1万円(税別)で行っております。

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