歯周病は遺伝する?体質との関係性やリスクを抑えるための対策
「親が重い歯周病だったので、自分も歯を失うのではないか」「家族に歯周病の人が多いのは、遺伝が原因なのか」と不安に感じる方もいるでしょう。
一般的な歯周病は、親から子へそのまま受け継がれる単純な遺伝病ではありません。しかし、歯周病のなりやすさや進行しやすさには、遺伝的な体質が関係します。
また、家族は遺伝子だけでなく、口腔内細菌、歯磨きや喫煙などの生活習慣、歯医者への受診習慣も共有しています。そのため、家族に歯周病が多い場合は、「遺伝だから仕方がない」と考えるのではなく、自分にも高いリスクがないかを早めに確認することが重要です。
今回は、歯周病と遺伝・体質との関係、家族に歯周病が多くなる理由、遺伝子検査の必要性、歯周病のリスクを抑えるための対策について、世田谷駅・上町駅周辺から通える歯医者 世田谷まきの歯科が解説します。なお、この記事では一般に「歯周病」と呼ばれる病気のうち、主に歯を支える組織が失われる「歯周炎」と遺伝との関係について説明します。
1.歯周病は遺伝する?
結論からお伝えすると、一般的な歯周病が、そのまま親から子へ遺伝するわけではありません。一方で、歯周病に対する感受性、つまり「なりやすさ」や「進行しやすさ」には遺伝的な要素があります。
歯周病は、歯に付着した細菌性バイオフィルムをきっかけとして、身体の免疫・炎症反応によって歯ぐきや歯根膜、歯槽骨などが破壊される病気です。
同じ程度のプラークが付着していても、ほとんど歯周組織が失われない方もいれば、比較的若いうちから歯周病が進行する方もいます。この違いには、歯磨きや喫煙、糖尿病などに加えて、細菌に対する免疫反応の個人差が関係しています。
成人した双子を対象とした研究では、歯周病の程度や進行速度にみられる個人差のうち、約4割前後が遺伝的な違いと関連すると推定されています。研究方法によって数値には幅がありますが、歯周病へのなりやすさや進行しやすさには、無視できない遺伝的要素があると考えられます。
ただし、この数値は「一人の患者さんの歯周病の原因の4割が遺伝である」「親が歯周病なら子どもも4割の確率で発症する」という意味ではありません。遺伝率とは、特定の集団で観察される個人差のうち、遺伝的な違いによって説明できる割合を示す統計値です。
つまり、一般的な歯周病そのものが遺伝するのではなく、歯周病になりやすい、あるいは進行しやすい体質を受け継ぐ可能性があると考えるのが適切です。
2.家族に歯周病が多いのはなぜ?
家族内に重度の歯周病の方が複数いる場合、その理由は遺伝だけではありません。主に、次の三つが関係します。
①歯周病に対する感受性が似ている
家族では、細菌に対する免疫反応や炎症反応に関係する遺伝的特徴が似ることがあります。
同じ程度のプラークが付着していても、炎症が強く起こる方や、歯周組織の破壊が進みやすい方がいます。特に、家族の中に若い年齢から重度の歯周病になった方や、歯周病によって早期に複数の歯を失った方がいる場合は注意が必要です。
②口腔内細菌が家族内で共有される
歯周病の原因となる細菌を含め、口腔内細菌の一部は、親子やパートナーなど家族の間で共有されることがあります。
ただし、細菌が家族から移っただけで歯周病を発症するわけではありません。歯周病の発症には、プラークが蓄積しやすい口腔環境、免疫反応、喫煙、糖尿病など、複数の条件が関係します。
そのため、食器や箸の共有だけを過度に恐れるよりも、家族に重度の歯周病がある場合は、まずその方が適切な治療を受け、家族全体で口腔内を健康に保つことの方が重要です。
③生活習慣や受診習慣が似ている
家族では、歯磨きの方法、歯間ブラシやデンタルフロスを使う習慣、食生活、喫煙、歯医者への受診頻度なども似る傾向があります。
「痛くなったときだけ歯医者へ行く」「歯ぐきから血が出ても気にしない」といった認識も、家庭内で共有される場合があります。
家族に歯周病が多いからといって、すべてを遺伝の影響と考えることはできません。遺伝的な感受性と、細菌や生活環境の両方を考える必要があります。
3.歯周病になりやすい体質は検査で分かる?
歯周病への感受性に関係する遺伝子は多数研究されています。しかし、一般的な歯周病は、一つの遺伝子だけで発症が決まる病気ではありません。
複数の遺伝的要素に、プラーク、喫煙、糖尿病、加齢、治療やセルフケアの状況などが重なって発症・進行する多因子性の病気です。
そのため、現時点では、遺伝子検査だけで、将来歯周病になるか、どの程度進行するか、などを正確に予測することはできません。
実際の診療では、遺伝子検査よりも、次の情報を確認することが重要です。
家族に重度の歯周病の方がいるか
家族が歯周病で若いうちに歯を失っていないか
年齢に対して歯周組織の喪失が大きくないか
過去の検査と比べて進行していないか
プラークの量に対して歯周組織の破壊が大きくないか
喫煙習慣があるか
糖尿病や血糖コントロールの問題がないか
治療後のメンテナンスを継続できているか
家族歴は歯周病のリスクを考えるうえで有用な情報ですが、家族歴だけで診断することもできません。歯周ポケット、臨床的アタッチメントレベル、出血、排膿、動揺、レントゲン所見などを調べ、現在の歯周組織の状態を確認する必要があります。
4.家族に歯周病が多い方が注意したいこと
家族に歯周病の方が多くても、将来歯周病になるとは決まっているわけではありません。しかし、一般の方よりも慎重に状態を確認する理由にはなります。
①症状がなくても歯周病の検査を受ける
歯周病は、初期から中等度の段階では痛みがほとんどなく、自分では気づきにくい病気です。
歯ぐきからの出血や腫れがなくても、家族に若年で重度の歯周病になった方や、歯周病で多くの歯を失った方がいる場合は、早めに歯周病の検査を受けましょう。
必要なのは、歯石を取るだけのクリーニングではなく、歯周ポケット、付着喪失、出血、動揺、レントゲン上の骨の状態などを確認する検査です。
②自分に合ったプラークコントロールを身につける
歯周病の発症には細菌性バイオフィルムが必要です。遺伝的に歯周病へ感受性が高い方であっても、プラークを適切に管理することは最も基本的な対策になります。
歯ブラシだけでは清掃できない部位もあるため、歯間ブラシやデンタルフロスを併用します。ただし、歯間部の広さや歯ぐきの状態は人によって異なるため、自分に合う器具やサイズ、使用方法を歯医者で確認することが大切です。
③喫煙と糖尿病を管理する
喫煙と糖尿病は、歯周病の進行や治療反応に影響する重要なリスク因子です。
遺伝的な感受性そのものを変えることはできませんが、禁煙や血糖管理など、変更できるリスクを減らすことはできます。糖尿病がある場合は、歯科だけでなく医科でも継続的な管理を受けましょう。
④リスクに応じた間隔でメンテナンスを受ける
家族歴があるという理由だけで、全員が同じ頻度で通院する必要はありません。
現在の歯周病の進行度、残っている歯周ポケット、出血、プラークコントロール、喫煙、糖尿病、過去の進行速度などを評価し、一人ひとりに適したメンテナンス間隔を決めます。
歯周病への感受性が高いと考えられる方では、状態が安定している方よりも短い間隔で確認する場合があります。
⑤家族も一度検査を受ける
家族の一人に、若年で発症した重度歯周病や、進行の速い歯周病が認められた場合は、親、兄弟姉妹、子どもなども一度歯周病の検査を受ける意義があります。
家族全員が同じ病気になるとは限りませんが、症状がない段階でリスクを確認できれば、重症化する前に対応できます。
5.歯周病の遺伝に関するよくある質問
親が歯周病なら、子どもも歯周病になりますか?
発症すると決まっているわけではありません。
歯周病への感受性を受け継ぐ可能性はありますが、発症や進行にはプラークコントロール、喫煙、糖尿病、歯医者での管理なども関係します。家族歴があることを、早めに検査と予防を始めるきっかけとして考えることが大切です。
歯周病菌が親から子どもへ移ることはありますか?
口腔内細菌の一部が家族内で共有されることはあります。
ただし、細菌が移ることと、歯周病を発症することは同じではありません。食器の共有だけを過度に心配するよりも、家族の口腔内を健康に保ち、子どもにも適切な歯磨きと定期的な検査の習慣をつけることが重要です。
遺伝子検査を受ければ歯周病のリスクが分かりますか?
現在の遺伝子検査だけで、一般的な歯周病の発症や進行を正確に予測することはできません。
家族歴を確認し、実際の歯周ポケット、付着喪失、出血、レントゲン所見、過去からの変化などを評価する方が、現在の診療では重要です。
6.世田谷駅・上町駅から通える歯医者 世田谷まきの歯科における歯周病リスクの評価
歯周病の発症や進行には、プラークだけでなく、患者さんの感受性、家族歴、喫煙、糖尿病、セルフケア、過去の治療歴などが関係します。
そのため、家族に重度歯周炎や歯周病によって歯を失っている人がいるか、などを確認します。
そのうえで、歯周ポケット、臨床的アタッチメントレベル、出血、排膿、動揺、根分岐部病変、レントゲン所見などを検査し、現在の病状と今後のリスクを評価します。
遺伝的な体質を変えることはできません。しかし、歯周病の原因となるプラークを管理し、喫煙や糖尿病など変更可能なリスクへ対応し、適切な間隔で状態を確認することはできます。
歯周炎は、歯を支える歯根膜や歯槽骨が失われる病気です。治療によって炎症を抑え、進行を止めることはできますが、失われた歯周組織が元の状態まで回復するとは限りません。そのため、症状が出てから治療するだけでなく、発症防ぎ、早い段階で変化を発見することが重要です。
遺伝的な体質そのものを変えることはできません。しかし、プラークコントロール、禁煙、糖尿病の管理、必要な歯周治療、治療後のメンテナンスなど、変更できる要因は複数あります。
そのため、遺伝的リスクを過度に恐れたり、「体質だから仕方がない」と諦めたりする必要はありません。現在の口腔内を検査し、自分で変更できるリスクへ一つずつ対応することが、現実的で効果の確立した対策です。
当院では、検査結果と考えられるリスクを患者さんと共有し、10年、20年先までご自身の歯を維持するために、患者さんと相談しながら治療・予防計画を作成します。ご家族が歯周病で歯を失っており「自分も体質だから仕方ない」と諦めかけている方や、ご自身の歯周病リスクを正しく把握したい方は、世田谷駅・上町駅周辺で歯医者をお探しの際はぜひ一度ご相談ください。
まとめ
一般的な歯周病は、親から子へそのまま受け継がれる単純な遺伝病ではありません。しかし、歯周病へのなりやすさや進行しやすさには、遺伝的な体質が関係します。
家族に歯周病が多い背景には、遺伝的な感受性だけでなく、口腔内細菌や生活習慣、受診習慣の共有もあります。
家族に若年で重度の歯周病になった方や、歯周病によって多くの歯を失った方がいる場合は、症状がなくても早めに歯周病の検査を受けましょう。
遺伝的な体質は変えられませんが、プラークコントロール、禁煙、糖尿病の管理、リスクに応じたメンテナンスによって、歯周病の発症や進行を抑えることは可能です。
世田谷区で歯周病についてお悩みの方は、世田谷駅・上町駅から通える歯医者 世田谷まきの歯科までお問い合わせください。
【監修】
牧野 友亮(世田谷まきの歯科 院長 / 歯科医師)
【経歴】
・2009年 昭和大学臨床研修
・2010年 志田歯科医院
・2012年 スウェーデンデンタルセンター
・2017年 世田谷まきの歯科 開院
【所属学会】
・日本歯周病学会
・日本顕微鏡歯科学会
・日本口腔インプラント学会