歯周病を放置するとどうなる?主なリスクと歯医者へ相談する目安
歯周病は、痛みが少ないまま進行しやすい病気です。そのため、「痛くないからまだ大丈夫」「出血が続くようなら歯医者に行こう」と考えてしまう方も少なくありません。
しかし、2017年に改定された歯周炎の重症度や進行リスクを判断する基準に、痛みの有無は含まれていません。痛みの有無は、歯周病の重症度や進行リスクを考える上で指標にはならないのです。現在の歯周病の分類では、歯を支える組織がどれだけ失われているか、治療がどの程度複雑になっているか、どのくらいの速度で進行しているかなどを評価します。
歯周病を放置して病気が進行すると、歯を支える骨が失われ、治療も複雑になります。さらに進行すれば、歯の動揺や噛み合わせの崩れが生じ、歯周病治療だけではなく、矯正治療や大掛かりな補綴治療(被せ物や入れ歯、インプラント)などが必要になることもあります。
今回は、歯周病を放置するリスクと、歯医者へ相談する目安について、世田谷駅・上町駅から通える歯医者 世田谷まきの歯科が解説します。
1. 歯周病を放置するとどうなる?進行によって起こる変化
歯周病は、歯と歯ぐきの境目に付着する細菌性プラーク(歯垢)を主な原因として起こる炎症性疾患であり、歯肉に炎症が限局している歯肉炎と、歯を支える歯周靱帯や歯槽骨に不可逆的な侵襲を与える歯周炎からなります。
歯肉炎では炎症は歯ぐきに限られていますが、歯周炎へ進行すると、歯と歯ぐきの付着が失われ、歯を支える歯槽骨まで破壊されていきます。
現在の歯周炎の分類では、「Stage(ステージ)」と「Grade(グレード)」という考え方が用いられています。Stageは現在までにどれだけ組織が失われ、治療がどの程度複雑になっているか、Gradeは歯周炎がどのくらいの速度で進行しているかを評価するものです。
つまり、歯周病は単純に「症状が強いか弱いか」だけで判断する病気ではありません。
①歯ぐきに炎症が起こる
歯ぐきに炎症が起こると、赤みや腫れ、歯磨きの際の出血がみられます。
健康な歯ぐきは、通常の歯磨きで容易に出血するものではありません。出血は、歯ぐきに炎症が起きていることを示す重要なサインです。
一方で、歯ぐきから血が出たからといって、それだけで歯周炎と診断することもできません。歯肉炎の段階なのか、すでに歯周炎まで進んでいるのかは、歯周ポケットや出血、レントゲンなどを確認して判断します。
②歯周ポケットが形成され、深くなる
歯周炎になると、歯と歯ぐきの付着が失われ、歯周ポケットが形成されます。
歯周ポケットが深くなるほど、歯ブラシだけでは内部の細菌や歯石を取り除くことが難しくなります。そのため、セルフケアだけでは改善できない部分に対して、歯医者で専門的な処置を行います。
③歯を支える骨が失われる
歯周炎が進行すると、歯を支えている歯槽骨が失われます。
これは「歯周病を放置すると、運が悪ければ起こる」というものではなく、歯周炎が進行したときに起こる病態そのものです。
問題は、進行する速度が患者さんによって異なることです。ゆっくり進行する人もいれば、年齢に対して速い速度で歯周組織が失われる人もいます。
そのため、痛みの有無や見た目だけから「まだ大丈夫」と判断することはできません。
④さらに進行すると、歯の動揺や噛み合わせにも影響する
歯を支える骨が大きく失われると、歯がぐらつき始めます。
さらに重度になると、歯が移動する、前歯が開く、噛み合わせが変わる、硬い物が噛みにくくなるなど、口全体の機能にも影響します。
現在の分類で重度に進行したStage IVでは、歯の動揺だけでなく、歯の移動、噛み合わせの崩壊、咀嚼機能の低下なども重症度を判断する重要な要素です。
歯周病は、進行すると単なる「歯ぐきの病気」ではなく、噛む機能そのものに影響する病気になります。
2. 歯周病を放置することで考えられるリスク
歯周病を放置するリスクは、出血や腫れが続くことだけではありません。
歯周炎が進行するほど失われる組織が増え、治療が複雑になり、治療後にも長期的な管理が必要になります。
①失った歯周組織は元に戻りにくい
歯周治療によって炎症を改善し、病気の進行を抑えることはできます。
しかし、歯周病によって失われた歯槽骨や歯周組織が、炎症が治まっただけで元の状態に戻るわけではありません。
骨の失われ方など一定の条件が整っていれば、歯周組織再生療法によって組織の回復を目指せる症例もあります。ただし、失った骨をすべて元通りにできる治療ではありません。
そのため、歯周病は「悪くなってから治療すれば同じ」ではありません。現在残っている歯周組織を守ることも、歯周病治療の重要な目的です。
②進行するほど治療が複雑になる
歯周炎が比較的軽い段階では、セルフケアの改善や歯石除去、歯ぐきの中のプラークや歯石を除去する治療によって改善を目指します。
しかし、深い歯周ポケットや複雑な骨欠損、根分岐部病変などが残れば、歯周外科治療や歯周組織再生療法を検討します。
さらにStage IVまで進行し、歯の移動や歯の喪失、噛み合わせの崩壊まで生じると、歯周病治療だけでは十分ではありません。状態によっては、矯正治療、補綴治療などを組み合わせ、噛む機能そのものを再構築する必要があります。
治療が複雑になれば、治療期間や通院回数だけでなく、身体的・経済的な負担も大きくなりやすくなります。
治療を先延ばしにして歯周病が進行するほど、解決しなければならない問題が増えていきます。
これも、歯周病を放置しない方がよい大きな理由です。
③歯を失い、噛む機能や見た目にも影響する
歯を支える骨を大きく失うと、歯の動揺が強くなり、最終的には歯を維持できない段階に入ります。
また、歯を失う前から、歯の移動によって前歯に隙間ができる、歯ぐきが下がって歯が長く見える、噛みにくくなるなど、見た目や日常生活にも影響します。
歯を失った後には、その部分を補う治療も必要になります。特にむし歯で抜歯になった人と異なり、歯周病の患者さんは歯を支える骨を喪失しているため、その後の欠損補綴が困難になります。入れ歯は歯ぐきの土手が痩せているため安定が悪く、入れ歯を支える土台の歯も揺れてしまい、入れ歯がうまく機能しにくくなります。インプラント治療では、痩せてしまった骨ではインプラントを十分に支えきれず、骨の移植など、大掛かりで侵襲的な手術が必要になることもあります。
つまり歯周病を放置するリスクは「歯が抜ける」だけではありません。自分の歯で自然に噛める状態を維持することが難しくなることまで含めて考える必要があります。
④全身の健康との関連も考える
歯周炎は、口の中だけで完結する病気ではありません。
特に糖尿病と歯周炎には、互いに影響し合う「双方向の関係」があることが分かっています。血糖コントロールが悪いと歯周炎が進行しやすくなり、歯周炎の炎症は糖尿病の管理にも影響します。
また、歯周炎と心血管疾患との関連も数多く報告されています。
ただし、「歯周病を放置すると心筋梗塞になる」というような単純な因果関係が証明されているわけではありません。歯周炎のある人では心血管疾患のリスクが高いことが分かっており、口の中の慢性炎症を全身の健康と切り離して考えないことが重要です。
歯周病の進行には、喫煙や糖尿病なども大きく関係します。
現在の歯周炎のGrade評価でも、喫煙と糖尿病は重要なリスク因子として扱われています。
3. 歯周病について歯医者へ相談するタイミング
歯周病について、「どのくらい症状が続いたら歯医者に行けばいいですか?」と考える方もいるかもしれません。
しかし、歯周炎の重症度や進行速度を判断する基準に、痛みの有無や「何日間症状が続いたか」は含まれていません。
痛くないから問題ない、とは判断できません。
また、「出血が続いたら」「腫れが続いたら」と様子を見る期間を設ける医学的なメリットもありません。
症状に気づき、「なぜだろう」と感じた時点で原因を確認することが、歯周病では重要です。
①歯磨きのときに出血したとき
歯ぐきからの出血は、炎症を示す代表的なサインです。
一度出血しただけで歯周炎と決まるわけではありません。しかし、「何日続くか」を確認するために意図的に待つ必要もありません。
歯肉炎なのか、すでに歯周炎へ進行しているのかを確認するため、気になる出血があれば歯医者へ相談してください。
②歯ぐきが腫れた、膿が出た、口臭が変わったとき
歯ぐきの腫れや膿は、歯周組織に炎症や感染が起きているサインです。
ただし、腫れや膿の原因は歯周病だけではありません。根の先に感染が起きる根尖性歯周炎、歯根破折、歯内歯周病変などでも似た症状が出ます。
重要なのは、「歯周病だろう」と自己判断することではなく、どこから炎症が起きているのかを診断することです。
口臭についても同じで、歯周病だけでなく、舌苔、口腔乾燥、むし歯、不適合な被せ物など複数の原因があります。
③歯が動く、歯の位置や噛み合わせが変わったとき
歯が以前より動く、前歯に隙間ができた、歯並びが変わった、噛み合わせに違和感があるという変化は、歯を支える組織に大きな変化が起きている可能性を考える所見です。
歯周炎が進行しているのか、噛む力の問題が加わっているのか、歯根破折など別の原因があるのかを確認します。
特に歯の動揺や噛み合わせの変化が出ている場合は、痛みがなくても早めに診断を受けることをおすすめします。
④痛みがなくても、リスクがある人は状態を確認する
歯周病は痛みだけでは判断できません。
特に、喫煙している方、糖尿病がある方、過去に歯周病を指摘された方、家族に重度の歯周病の方がいる場合などは、自覚症状が乏しくても歯周組織の状態を確認する意味があります。
歯医者では、歯周ポケット、歯ぐきからの出血、歯の動揺、レントゲンで確認する骨の状態などを組み合わせ、現在どの程度まで病気が進んでいるかを診断します。
歯周病は「痛くなったら受診する病気」ではありません。
出血、腫れ、口臭、歯ぐきの変化など、「いつもと違う」と感じることがあれば、その時点で原因を確認することをおすすめします。
4. 世田谷駅・上町駅から通える歯医者 世田谷まきの歯科の歯周病治療について
世田谷まきの歯科では、歯周病を単に「歯石を取る病気」とは考えていません。
歯周病治療で重要なのは、現在どの程度まで病気が進んでいるのかを診断し、なぜ進行したのかを考え、治療後も安定した状態を維持できる環境を作ることです。
【世田谷駅・上町駅周辺から通える歯医者 世田谷まきの歯科の歯周病治療の特徴】
当院の歯周病治療のポイント①:現在の進行度とリスクを診断する
歯周ポケットの深さだけでは、歯周病の状態を十分に評価できません。
歯ぐきからの出血、歯の動揺、レントゲンで確認する骨吸収、歯を失った原因などを総合して、現在どの程度まで歯周組織が失われているのかを確認します。
さらに、喫煙や糖尿病など、歯周炎の進行に関係するリスク因子も確認します。
「今どれくらい悪いか」だけではなく、これまでどのように進み、これからどのようなリスクがあるのかまで考えることが、治療計画を立てる第一歩です。
当院の歯周病治療のポイント②:症状だけで決めつけず、原因を分けて診断する
出血、腫れ、膿、歯の動揺などがあっても、その原因が歯周病とは限りません。
例えば腫れや膿であれば、歯周病なのか、根の先の感染なのか、歯根破折なのかを分けて診断します。
歯が動いている場合も、歯周組織の破壊だけでなく、噛む力や歯根の状態などを確認します。
症状だけを見て治療するのではなく、なぜその症状が起きているのかを確認してから治療方針を決めることを大切にしています。
当院の歯周病治療のポイント③:患者さんと治療のゴールを共有する
歯周病治療は、歯医者で歯石を取るだけでは成立しません。
毎日のセルフケアと歯医者で行う専門的な治療の両方が必要です。
また、同じ歯周病でも、現在の進行度、残っている歯、生活習慣、患者さんが希望する治療内容によって治療計画は変わります。
当院では、検査結果を患者さんと共有し、歯科医師として客観的な意見をお伝えしたうえで、10年、20年先まで考えた治療方針を一緒に決めていきます。
当院の歯周病治療のポイント④:治療後まで長期的に管理する
歯周病は、治療によって炎症が改善すれば終わりではありません。
歯周炎を経験した歯周組織は、治療後も再発や進行を防ぐための継続的な管理が必要です。
治療後の状態やリスクに応じて定期的に歯周組織を確認し、必要なセルフケアと専門的なメインテナンスを続けます。
また、継続して通院しやすいよう、平日は昼休みを設けず18時まで、土曜日・日曜日は17時まで診療しています。
歯周病は、痛みの強さだけでは進行度を判断できません。
「血が出た」「歯ぐきが腫れた」「歯が動く気がする」など、いつもと違う変化に気づいたときは、症状が続くかどうかを待つのではなく、一度原因を確認しておくことをおすすめします。
まとめ
歯周病を放置するリスクは、歯ぐきの出血や腫れが続くことだけではありません。
歯周炎が進行すると、歯を支える歯槽骨が失われます。さらに進行すれば歯が動き、噛み合わせや咀嚼機能にも影響し、最終的には歯を失う原因になります。
また、病気が進行するほど治療は複雑になり、歯周外科や再生療法、さらに重度になると矯正治療や補綴治療まで必要になる症例があります。失われた歯周組織は、治療を始めればすべて元通りになるわけでもありません。
一方で、歯周炎の進行速度には個人差があります。喫煙や糖尿病などによってもリスクは変わり、痛みがないから進行していないとは判断できません。
そのため、「痛くなったら」「出血や腫れが続いたら」と待つのではなく、歯ぐきからの出血、腫れ、口臭、歯の動きなど、気になる変化に気づいた時点で原因を確認することが重要です。
世田谷駅・上町駅周辺で歯周病について気になる症状がある方は、世田谷まきの歯科までご相談ください。
【監修】
牧野 友亮(世田谷まきの歯科 院長 / 歯科医師)
【経歴】
・2009年 昭和大学臨床研修
・2010年 志田歯科医院
・2012年 スウェーデンデンタルセンター
・2017年 世田谷まきの歯科 開院
【所属学会】
・日本歯周病学会
・日本顕微鏡歯科学会
・日本口腔インプラント学会