左上の奥歯の痛みで来院されました。左上の義歯の下に入っている歯、左下の銀歯から膿が出ていました。
左上の奥歯は残念ながら抜歯を行い、左下の銀歯は根の治療と歯周病の治療を行いました。
上が術前、下が術後です。もともと入っている差し歯(金属の杭)の位置が悪く、それに伴って骨が欠損し、歯周ポケットもできていたので、破折を疑っていましたが、根の治療と歯周病の治療で、状況は十分に改善したように思います。排膿は止まり、症状もなくなりました。歯周ポケットも改善しています。
すでに他院にて保険外の義歯を作成しており、何十万も支払っているということで、今回は保険の範囲内希望ということでした。本来、保険外の入れ歯は修理しながら一生使う、ぐらいの気持ちで作成すると思いますが、残念ですね。一度嫌な経験をしていると、なかなか信用できなくなってしまう気持ちもよくわかります。
しかし、入れ歯のバネが見えるのがどうしても嫌だということで、上の入れ歯だけ保険外で金属のバネがない入れ歯を作成いたしました。追加で歯を削るとか、インプラント治療も怖い、ということで、ほとんど前の先生の設計のままですが。
上の前歯の詰め物や下のかぶせ物と義歯は保険の範囲内で、上の義歯だけ保険外で30万円。治療期間は四か月ほど。
スマイルデンチャーやノンクラスプデンチャーはあまり推奨はしていませんし、個人的に思う治療のゴールはこれとは全然違いましたが、治療に対する恐怖心や、過去の経験から心配する気持ちがあることなどもよくわかります。自分も親が歯医者とかではなかったので、小さいころから歯医者さんにはよく通い、嫌な経験を何度かしています。まさか自分がその嫌いな歯医者さんになるとは思いませんでしたが、人生とは不思議なものです。
説明を聞いたうえでどんな治療を選ぶのかは、責任のとれる大人なら自由だと思います。もちろん、判断に責任は伴うとは思いますけど。
その一方で、患者さんは専門家ではないので、歯医者さんなどの専門家が誘導してあげるべきだという意見も聞きます。どちらが絶対に正しい、ということはないでしょうが、個人的には、自分が受ける治療は、専門家の話をよく聞いたうえで、自分で判断したいと感じます。自分がそう思うので、人にもそうしたい、という安直な考え方ですが、治療は押し付けないように心がけております。それが正しいと思うから、とか、そういった正義感からではないですね。